「緑内障予備軍と言われたけど、ICLって受けられるの?」——そんな不安を抱えている方は少なくありません。視力矯正の選択肢としてICLへの関心が高まる一方で、緑内障リスクがある方にとっては「眼圧への影響が心配」「手術で悪化しないか」という疑問が先に立ちますよね。
この記事では、緑内障予備軍の方がICLを検討する際に知っておくべき適応基準・手術の流れ・術後のリスク管理まで、わかりやすく解説します。あくまでも情報提供を目的としたコンテンツですので、最終的な判断はかかりつけの眼科医師にご相談ください。
ICLとは?緑内障予備軍でも検討できる最新視力矯正法
ICLとレーシックの違いを3分で理解
ICL(Implantable Collamer Lens)は、眼の中にレンズを挿入して視力を矯正する手術です。レーシックが「角膜をレーザーで削る」のに対し、ICLは「角膜を削らずにレンズを追加する」という点が最大の違いです。
| 比較項目 | ICL | レーシック |
|---|---|---|
| 角膜への影響 | ほぼなし | 削って薄くなる |
| 適応できる近視度数 | 強度近視にも対応 | 高度近視は不向き |
| 可逆性 | レンズ摘出で元に戻せる | 不可逆的 |
| ドライアイリスク | 比較的低い | 発生しやすい |
| 眼圧への影響 | 術後一時的に上昇する可能性あり | 比較的少ない |
角膜を削らないため、薄い角膜や強度近視でも適応できるケースが多く、近年注目を集めています。緑内障予備軍の方にとっては「眼圧への影響」が気になるポイントになりますが、それについては次の項目で詳しく触れます。
緑内障予備軍が気になる”眼圧”とICLの仕組み
緑内障は眼圧の上昇などにより視神経が傷つき、視野が欠けていく病気です。緑内障予備軍とは、眼圧が高め・視神経に変化がある・家族歴があるなど、将来的に緑内障を発症するリスクが通常よりも高いとされる状態を指します。
ICL手術では、虹彩(茶目)と水晶体の間にレンズを挿入します。このとき、房水(目の中を循環する液体)の流れが一時的に変化し、術直後に眼圧が上昇することがあります。ただし、現在主流の「穴あきICL(EVO ICL)」は中央にマイクロホールが設けられており、房水の循環を維持しやすい設計になっています。
緑内障予備軍の方は、術前・術後の眼圧管理が特に重要になってくるため、対応できるクリニックを選ぶことが大切です。
ICLレンズの種類と眼内挿入の基本フロー
現在日本で主に使用されているICLは、スイスのSTAAR Surgical社が製造する「EVO ICL(エボICL)」です。以前のモデルと比べてマイクロホールが設けられており、虹彩切開(LI)が不要になったことで手術の侵襲性が低下しました。
度数は患者の眼のデータをもとに個別にオーダーメイドで製造されます。挿入の流れは大まかに以下の通りです。
- 点眼麻酔をかける
- 角膜に約3mmの小切開を作成
- 折りたたんだレンズを挿入し、虹彩と水晶体の間に固定
- 切開部は自然閉鎖(縫合不要のケースが多い)
レンズは半永久的に眼内にとどまりますが、必要に応じて摘出・交換できる点も安心感につながります。
緑内障予備軍へのICL適応基準:手術可否を決める5つのポイント
術前検査で確認する角膜厚・前房深度・眼圧
ICLを受けるにあたって、術前検査は欠かせないステップです。特に緑内障予備軍の方は、以下の3項目が重点的に確認されます。
| 検査項目 | 目安となる基準 | 緑内障予備軍での注意点 |
|---|---|---|
| 角膜厚 | 通常500μm前後 | 薄すぎるとリスク増 |
| 前房深度 | 2.8mm以上が目安 | 浅いと房水循環に影響 |
| 眼圧 | 10〜21mmHg(正常範囲) | 高めの場合は慎重な評価が必要 |
前房深度が十分にないと、レンズを適切に配置できないだけでなく、房水の流れが妨げられて眼圧が上昇するリスクが高まります。眼圧がもともと高めの方は、術後管理を含めてより慎重な対応が求められます。
緑内障家族歴や視野異常などリスク評価項目
術前検査では眼の構造的なデータだけでなく、問診によるリスク評価も行われます。以下のような項目が緑内障リスクに関連します。
- 家族歴:一親等に緑内障患者がいる場合はリスクが高い
- 視野検査の結果:すでに視野に欠損が生じているかどうか
- 眼底検査(OCT):視神経乳頭の形状・網膜神経線維層の厚さ
- 角膜形状検査:房水の排出に関わる隅角の状態
- 既往歴:ステロイド点眼の長期使用歴など
これらを総合的に評価したうえで、手術の適否が判断されます。
眼科医師が重視する”適応外”判断ケース
緑内障予備軍であっても全員がICL不適応というわけではありません。ただし、以下のようなケースでは適応外または慎重適応と判断されることが多いとされています。
- 眼圧が継続的に高く、点眼でもコントロールが難しい
- すでに視野欠損が進行している(緑内障が発症・進行している)
- 前房深度が著しく浅い(2.5mm未満が目安)
- 隅角が狭い(閉塞隅角緑内障のリスクが高い)
- 角膜内皮細胞密度が低い
「緑内障予備軍=絶対にNG」ではなく、個々の眼の状態によって判断が異なります。自己判断せず、必ず専門の眼科医に詳細な検査を受けてもらうことが大切です。
他の治療法と比較した際のメリット・デメリット
緑内障リスクがある方が視力矯正を検討する場合、ICL以外の選択肢も頭に入れておきましょう。
| 治療法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ICL | 強度近視に対応・可逆性あり・ドライアイになりにくい | 眼圧上昇リスク・費用が高い |
| レーシック | 手術時間が短い・費用が比較的安い | 角膜を削るため不可逆・ドライアイになりやすい |
| 眼鏡・コンタクト | 手術不要・リスクなし | 利便性に欠ける・コンタクトは角膜トラブルのリスク |
| 多焦点眼内レンズ(老眼も対応) | 老眼矯正も同時に可能 | 適応条件が異なる・グレアが出ることも |
緑内障予備軍の方にとっては「角膜を傷つけない」「可逆性がある」というICLの特性はメリットになりますが、眼圧管理の観点から術後フォローが十分なクリニックを選ぶことが前提条件になります。
ICL手術プロセスと当日の流れを徹底ガイド
予約から術前説明までのタイムライン
ICL手術は当日いきなり受けられるものではなく、複数回の来院が必要です。一般的な流れは以下の通りです。
- 初回カウンセリング:適応検査・問診・基本的な眼のデータ収集
- 精密検査:角膜形状・前房深度・眼圧・視野・眼底など詳細検査
- レンズ発注:検査データをもとにオーダーメイドレンズを製造(数週間かかる場合も)
- 術前説明:手術のリスク・流れ・術後の注意点について説明を受ける
- 手術当日:実際の施術
緑内障予備軍の方は精密検査の項目が増える場合もあるため、初回から手術まで1〜2ヶ月程度を見込んでおくと安心です。
手術当日の所要時間・麻酔・レンズ挿入手技
手術当日の流れを簡単にまとめると、次のようになります。
- 来院〜準備:瞳孔を広げる点眼薬(散瞳薬)を複数回点眼(約30〜60分)
- 麻酔:点眼麻酔が基本。痛みはほとんど感じないとされている
- 手術時間:両眼で15〜30分程度
- 術後休憩:30分〜1時間程度クリニックで様子を見てから帰宅
全身麻酔は不要で、意識がある状態で手術が行われます。手術中に軽い圧迫感を感じることがある程度で、多くの方が思ったより楽だったと話しています。
感染症を防ぐために患者ができる準備
手術前後の感染対策として、患者側でできることがあります。
- 術前3日〜1週間前から抗菌点眼薬を開始するよう指示される場合がある
- コンタクトレンズは術前の指定期間(ソフトは数日、ハードは2週間以上が目安)は使用を中止する
- アイメイクは手術当日(場合によっては前日から)は控える
- 風邪や体調不良がある場合は事前に相談する
- 術後は目を触らない・こすらない
些細なことに思えますが、感染症は術後合併症の中でも特に重大なリスクになるため、指示はしっかり守ることが大切です。
入院は必要?日帰り手術のリアル
ICL手術は基本的に日帰りで行える外来手術です。入院は必要ありません。ただし、手術当日は車の運転ができないため、交通手段の確認は必須です。
術後すぐに視力が改善する方が多いですが、当日は安静が推奨されます。翌日または翌々日には術後検診があり、眼圧・視力・レンズの位置などを確認します。緑内障予備軍の方はこの初回検診が特に重要で、眼圧の数値変化を慎重にチェックしてもらう必要があります。
術後経過と合併症リスク:緑内障悪化を防ぐポイント
術後の眼圧モニタリング期間と頻度
ICL術後の眼圧管理は、緑内障予備軍の方にとって最重要事項のひとつです。一般的な術後検診のスケジュールは下記を目安にするクリニックが多いです。
| 時期 | 検診内容 |
|---|---|
| 術翌日 | 視力・眼圧・レンズ位置確認 |
| 術後1週間 | 眼圧・炎症の有無 |
| 術後1ヶ月 | 視力安定確認・眼圧測定 |
| 術後3〜6ヶ月 | 経過観察・眼圧・視野 |
| 以降1年ごと | 定期的な経過観察 |
緑内障予備軍の方は、上記スケジュールよりも頻繁な検診を求められるケースもあります。「視力が良くなったから」と自己判断で通院をやめず、指示された検診はきちんと受けましょう。
レンズ位置ずれ・白内障など起こり得る合併症
ICL手術に伴う主な合併症リスクを把握しておきましょう。
- 眼圧上昇:術後早期に起こりやすく、緑内障予備軍では特に注意
- レンズ位置ずれ(偏位):まれだが、見え方に影響が出ることがある
- 前嚢下白内障:レンズと水晶体が接触することで水晶体が濁るリスク(EVO ICLではリスクが低下)
- 角膜内皮細胞減少:長期的に角膜内皮細胞が減少する可能性
- 感染性眼内炎:非常にまれだが重篤な合併症
- ハロー・グレア:夜間に光がにじんで見える現象
緑内障予備軍の方に特に関係するのは眼圧上昇です。術後に眼圧が継続的に高くなる場合は、点眼薬での治療が追加されることがあります。
コンタクトレンズ再開はいつから可能?
ICL術後のコンタクトレンズ再開については、多くの場合「基本的には不要」というのが実情です。ICLで視力矯正が完了しているため、コンタクトを使う必要がなくなる方がほとんどです。
どうしても必要な場合(乱視矯正など残余度数がある場合)は、術後の傷が安定してから——目安として1〜3ヶ月以降に、担当医と相談のうえで再開可否を判断します。
異常を感じたらどのタイミングでクリニック受診?
以下の症状を感じたら、次の定期検診を待たずに早めにクリニックに連絡・受診することをおすすめします。
- 急激な視力低下・かすみ
- 強い眼痛・頭痛
- 光を見たときの強い不快感(羞明)
- 充血がひどい・分泌物が多い
- 虹のような輪(ハロー)が急に強くなった
- 視野の一部が急に欠けてきた感覚
特に最後の「視野異常」は緑内障の悪化サインである可能性があるため、緑内障予備軍の方は特に意識して自覚症状を観察するようにしましょう。
緑内障予備軍が知っておくべきICLの長期的メリット・デメリット
視力の安定性と生活の質(QOL)向上
ICLは角膜を削らないため、術後の視力が長期にわたって安定しやすいとされています。強度近視の方がレーシックを受けた場合、近視が戻ってくる(退行)リスクがありますが、ICLではレンズを取り出さない限り矯正効果が続きます。
眼鏡やコンタクトが不要になることで、スポーツ・旅行・日常生活のQOLが大幅に向上したと感じる方が多く、「もっと早く受ければよかった」という声も珍しくありません。
緑内障予備軍の方にとっては「定期検診を継続しやすい動機づけになる」という副次的なメリットもあります。ICL術後の定期通院が習慣化することで、緑内障の早期発見にもつながりやすくなります。
点眼治療との併用は可能か
緑内障予備軍の方が点眼薬(眼圧降下薬など)を使用している場合、ICL術後も継続できるかどうかは気になるポイントですよね。
基本的には点眼治療との併用は可能です。ICLのレンズ自体が点眼薬の効果を妨げることはありません。ただし、術後しばらくは抗炎症・抗菌の点眼薬が処方されるため、既存の点眼薬との順番や回数について担当医に確認することが大切です。
将来の白内障手術への影響
年齢を重ねると誰でも水晶体が濁る「白内障」が起こり得ます。ICLを入れた方が将来白内障手術を受ける場合、どうなるのでしょうか。
基本的には、ICLを摘出したうえで白内障手術(水晶体を人工眼内レンズに交換)を行うことが可能です。ICLを入れていることで白内障手術ができなくなるわけではありません。ただし、ICLによって角膜のデータが通常とは異なる場合があり、白内障手術後の人工レンズ度数計算に一定の注意が必要とされています。事前に担当医に確認しておくと安心です。
信頼できるクリニックと医師の選び方
専門医資格とICL症例数のチェックポイント
ICLは高度な技術を要する眼内手術です。クリニックや執刀医を選ぶ際には、以下の点を確認しましょう。
- 日本眼科学会認定の眼科専門医であるか
- ICL認定医・認定施設かどうか(STAAR Surgical社の認定プログラムがある)
- 年間・累計のICL症例数が公開されているか
- 緑内障の専門的な検査・治療の実績があるか
特に緑内障予備軍の方は、ICLだけでなく緑内障にも精通した医師が在籍しているクリニックを選ぶことが重要です。ICL専門クリニックの中には緑内障の専門外来を持たない施設もあるため、確認が必要です。
緑内障検査機器の充実度とアフターケア体制
設備面でも確認したいポイントがあります。
- OCT(光干渉断層計):視神経・網膜神経線維層の評価に必須
- 視野計(ハンフリー視野計など):緑内障の進行評価に使用
- 隅角鏡・隅角OCT:閉塞隅角のリスク評価
- 眼圧計(ゴールドマン眼圧計など):精度の高い眼圧測定
術後のアフターケアとして、何かあった際にすぐ相談できる体制(電話・オンライン相談窓口など)が整っているかも確認しておくと安心です。
費用・保証プランを比較する際の注意点
ICLは自由診療のため、費用はクリニックによって異なります。全国的な相場は両眼で45〜70万円前後が目安ですが、緑内障予備軍向けの追加検査費用が発生するケースもあります。
費用を比較する際の注意点をまとめます。
- 術前検査・術後検診が費用に含まれるかを確認する
- レンズのグレード(乱視矯正対応など)によって価格が異なる
- 保証プラン:視力が戻った場合の再手術保証や、合併症対応の保証内容を確認
- 安さだけで選ばず、緑内障対応の体制・医師の経験を優先する
分割払い・医療ローンを利用できるクリニックも多いので、費用面で迷っている場合は確認してみましょう。
総まとめ:緑内障予備軍がICLを受ける前に確認すべきチェックリスト

緑内障予備軍であっても、眼の状態によってはICLを受けられる可能性があります。重要なのは「緑内障予備軍だから無理」と最初から諦めるのではなく、詳細な術前検査を受けて個別に判断してもらうことです。
以下のチェックリストを参考に、受診・意思決定の参考にしてみてください。
▼術前の確認事項
- [ ] 前房深度・角膜厚・眼圧の検査を受けた
- [ ] 視野検査・OCT検査で緑内障の進行度を確認した
- [ ] 緑内障家族歴・既往歴を医師に正確に伝えた
- [ ] 現在使用中の点眼薬・内服薬を申告した
- [ ] ICLと他の治療法のメリット・デメリットを比較した
▼クリニック選びの確認事項
- [ ] ICL認定医・眼科専門医が在籍している
- [ ] OCT・視野計など緑内障検査機器が充実している
- [ ] 術後の眼圧モニタリング体制が整っている
- [ ] 費用・保証内容が明確に提示されている
- [ ] 何かあったときの緊急連絡体制がある
▼意思決定の心構え
- [ ] 1つのクリニックだけでなく、複数施設でセカンドオピニオンを検討する
- [ ] 「適応外」と言われた場合、その理由を具体的に聞く
- [ ] 術後も定期検診を継続できる環境・モチベーションがあるか確認する
緑内障予備軍にとって視力矯正の選択は、単に「よく見えるようになる」だけでなく、長期的な眼の健康管理とセットで考えることが大切です。ICLを検討しているなら、まずは緑内障の検査にも対応できる眼科での精密検査から始めてみてはいかがでしょうか。
