白内障手術の費用はいくら?保険適用と選定療養をわかりやすく解説

「最近、視界がなんとなくぼやける」「まぶしく感じることが増えた」——そんな変化を感じたとき、白内障という言葉が頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。

白内障は、目の中のレンズ(水晶体)が濁ることで起こる病気で、加齢とともに誰にでも起こりうる身近な疾患です。日本では50代から発症率が上がり、80代以上ではほぼ全員に何らかの白内障があると言われています。

気になるのは「手術が必要になったとき、費用はどのくらいかかるの?」という点ですよね。保険が使えるのか、多焦点レンズを選ぶと高くなるのか、高額療養費制度は使えるのか——疑問は尽きません。

この記事では、白内障手術の費用・保険適用の仕組みから、手術しない場合の選択肢、術後の生活まで、幅広くわかりやすくまとめています。眼科受診を検討している方や、手術を勧められて情報収集中の方のお役に立てれば幸いです。

白内障手術費用の目安と保険適用の仕組み

公的医療保険がカバーする手術・検査・入院費の割合

白内障手術は、公的医療保険(健康保険)が適用される手術です。使用するレンズが「単焦点眼内レンズ」であれば、手術費用・術前検査・術後の診察・処方薬などがすべて保険の対象になります。

自己負担の割合は年齢や所得によって異なります。

年齢・区分自己負担割合
70歳未満3割
70〜74歳2割(現役並み所得者は3割)
75歳以上(後期高齢者)1割(現役並み所得者は3割)

手術費用そのものは、片眼あたり保険点数で約14,000〜20,000点(約14〜20万円相当)となるケースが一般的です。3割負担であれば片眼あたり約4〜6万円前後の自己負担が目安になります(麻酔・入院・検査費用を含む場合は前後することがあります)。

日帰り手術か入院かによっても総額は変わりますが、いずれも保険適用の範囲内であれば基本的な自己負担は変わりません。

選定療養で追加負担になる白内障レンズの種類と費用

「選定療養」とは、保険診療と保険外診療を組み合わせる仕組みのひとつです。白内障手術においては、多焦点眼内レンズ(近方・遠方など複数の距離に焦点を合わせられるレンズ) を使用する場合に適用されます。

2020年4月から厚生労働省の制度改正により、多焦点レンズを使った白内障手術が「選定療養」として認められました。これにより、手術の技術料・検査・薬剤費などは保険適用のまま、レンズ差額分だけを自費で支払う仕組みになっています。

追加費用(レンズ差額)の目安は以下のとおりです(施設によって異なります)。

レンズの種類追加費用の目安(片眼)
単焦点レンズ(保険適用)0円(差額なし)
選定療養対象の多焦点レンズ約5〜20万円程度
保険適用外の多焦点レンズ(先進医療等)約15〜40万円程度

多焦点レンズを選ぶと術後に眼鏡が不要になるケースも多く、生活の質が上がるメリットがある一方、コントラスト感度の低下やハローグレア(光のにじみ)が出ることもあるため、担当医とよく相談したうえで選択することが大切です。

自己負担を抑える方法:高額療養費制度と医療費控除

白内障手術は医療費が一定額を超えると、高額療養費制度を使って払い戻しを受けることができます。1か月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合、超えた分が後日返還される仕組みです。

自己負担の上限額(月額)の目安は以下のとおりです(70歳未満の場合)。

所得区分自己負担上限額(月)
年収約1,160万円超252,600円+α
年収約770〜1,160万円167,400円+α
年収約370〜770万円80,100円+α
年収約370万円以下57,600円
住民税非課税世帯35,400円

また、医療費控除も活用できます。1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合、確定申告で所得控除を受けられます。

なお、選定療養で支払った多焦点レンズの差額も医療費控除の対象になります。眼科でもらった領収書は大切に保管しておきましょう。

白内障とはどんな病気?原因・初期症状・視界の変化をチェック

見え方がぼやけるのは白内障の症状?視力低下のサイン

白内障は、目の中にある「水晶体」という透明なレンズが、さまざまな原因によって白く濁っていく病気です。カメラに例えると、レンズが曇ってしまった状態に近いイメージです。

主な症状は以下のとおりです。

  • 視界全体がぼやける・かすむ
  • 色がくすんで見える(特に青や白が黄みがかって見える)
  • 光がまぶしく感じる(グレア・ハローが出やすい)
  • 一時的に近くが見やすくなる(水晶体の屈折変化による)
  • 二重に見える・像がにじんで見える

初期のうちは「老眼かな?」「疲れ目かな?」と感じるほどの軽い変化ですが、進行すると日常生活に支障が出てきます。

近くが見えにくい・遠くがまぶしい―焦点が合わないときの注意

白内障の進行度によって、症状の出方はさまざまです。「遠くが見えにくくなった」という方もいれば、「近くが急に見えやすくなった(近視化)」という方もいます。後者は「核白内障」に特徴的な変化で、いわゆる「老人性近視」とも呼ばれます。

また、夜間や暗い場所での視力低下、運転中に対向車のライトがひどくまぶしく感じるといった症状は、白内障の影響で光の散乱が起きているサインです。こうした変化が続く場合は、放置せずに眼科を受診することをおすすめします。

眼科を受診するタイミングと精密検査の内容

「なんとなくいつもより見えにくい」と感じたら、まずは眼科への受診を検討してみてください。白内障の診断は、以下のような検査で行われます。

  • 視力検査:裸眼・矯正視力の確認
  • 細隙灯(さいげきとう)検査:水晶体の濁りの程度・位置を確認
  • 眼圧検査:緑内障などとの鑑別
  • 眼底検査:視神経・網膜の状態確認
  • コントラスト感度検査:視力値に現れにくい見えにくさを評価

白内障は視力検査だけではわからないこともあるため、細隙灯検査を含む精密検査が重要です。「視力はそこまで落ちていないのに見えにくい」という方も、一度眼科で相談してみましょう。

白内障手術をしないで治す選択肢:薬・目薬・眼鏡による矯正治療

点眼薬・内服薬の最新エビデンスと限界

「手術はこわい」「できれば薬で治したい」と思う方は多いと思います。現在、日本で白内障の進行抑制を目的として使われる点眼薬としては、ピレノキシン(カリーユニ点眼液など)グルタチオン(タチオン点眼液) などがあります。

ただし、これらの点眼薬は白内障を治したり、視力を回復させたりする薬ではありません。あくまで「進行を緩やかにする可能性がある」とされているもので、その効果についてもエビデンス(科学的根拠)はまだ十分ではないのが現状です。

現時点では、「白内障を薬で根本的に治す方法」は確立されていません。これは世界的に共通した医学的見解です。

乱視や近視を眼鏡で矯正し視力を維持するコツ

白内障の初期〜中期では、眼鏡による視力矯正で日常生活を維持できるケースも多くあります。白内障の進行に伴って屈折(近視・乱視の度数)が変化することがあるため、定期的に眼鏡の度数を見直すことが大切です。

  • 半年〜1年に1回は眼科で屈折検査を受ける
  • 眼鏡店での測定だけでなく、眼科での処方を基にした眼鏡を作る
  • 強い光やまぶしさが気になるときはUVカット・防眩レンズを検討する

ただし、眼鏡はあくまで「今の見え方をサポートするもの」です。白内障そのものの進行を止めることはできません。

手術と比較したメリット・デメリットと必要な生活習慣

治療法メリットデメリット
点眼薬・薬物療法手術リスクなし・低コスト進行抑制効果は限定的・根本治療にならない
眼鏡・コンタクト矯正非侵襲的・手軽白内障の進行は止められない
手術(眼内レンズ挿入)視力回復が見込める・根本的治療手術リスク・費用・術後管理が必要

手術をせずに経過観察を選ぶ場合、以下のような生活習慣が白内障の進行を緩やかにする可能性があると言われています。

  • 紫外線対策(UVカットサングラスの着用)
  • 禁煙(喫煙は白内障のリスク因子)
  • 抗酸化作用のある食品(ルテイン・ビタミンC・E)を含む食事
  • 糖尿病などの全身疾患のコントロール

手術を選んだ場合の流れ:術前準備から術後ケアまで

病院・医師選びと眼内レンズの種類・焦点設計

白内障手術を受ける病院・クリニックを選ぶ際のポイントは以下のとおりです。

  • 眼科専門の医師が常駐しているか
  • 手術実績・症例数が多いか
  • 使用できる眼内レンズの種類が豊富か
  • 術前・術後の検査体制が整っているか
  • 自宅から通いやすいか(術後の通院を考慮)

眼内レンズは大きく「単焦点」「多焦点」「トーリック(乱視矯正)」に分かれており、それぞれ見え方・費用・保険適用の有無が異なります(詳細は後述のセクションで解説します)。担当医とのカウンセリングで、自分のライフスタイルや仕事内容に合ったレンズを選ぶことが重要です。

入院か日帰りか?スケジュールと費用の違い

白内障手術は現在、多くのケースで日帰り手術が可能です。手術時間自体は片眼で15〜30分程度のことが多く、術後に問題がなければその日のうちに帰宅できます。

項目日帰り手術入院手術
入院期間不要(当日帰宅)1〜数日
費用比較的低コスト入院費が加算
向いている方全身状態が安定している方全身疾患がある・片道移動が困難な方

高齢者や全身疾患(糖尿病・心疾患など)がある方は、万が一のリスク管理のため入院を勧められるケースもあります。担当医と相談して決めましょう。

術前には、眼の精密検査(眼軸長測定・角膜形状解析など)のほか、血液検査や心電図などの全身評価が行われることもあります。

術後の合併症リスクと後発白内障への注意

白内障手術は安全性の高い手術ですが、まれに合併症が起こる可能性があります。主なリスクは以下のとおりです。

  • 感染症(眼内炎):術後に強い痛みや視力低下が出たらすぐに受診
  • 眼圧上昇:緑内障に似た症状が出ることがある
  • 後発白内障:手術後数か月〜数年後に、レンズを支える膜(後囊)が濁ること。レーザー治療(YAGレーザー)で対処可能

後発白内障は白内障手術後にもっとも多く見られる変化で、「せっかく手術したのにまたぼやけてきた」と感じる原因の多くがこれです。再手術ではなくレーザー治療で解決できるケースがほとんどです。

眼内レンズで変わる見え方:単焦点・多焦点・トーリックの比較

近く重視か遠く重視か?ライフスタイル別レンズ選び

眼内レンズは一生涯目の中に入り続けるものです。自分の生活スタイルに合った選択が、術後の満足度を大きく左右します。

ライフスタイルおすすめの焦点設定
車の運転が多い・アウトドア派遠方重視の単焦点または多焦点
デスクワーク・読書が多い近方重視の単焦点または近中対応多焦点
眼鏡をできるだけかけたくない多焦点レンズ(選定療養)を検討
コスト重視単焦点レンズ(保険適用)

単焦点レンズは「1点に焦点を合わせる」仕組みのため、術後は遠くか近くのどちらかに合わせる必要があります。遠方に合わせた場合は近くを見るときに眼鏡が必要になることが多く、逆もしかりです。

乱視矯正用トーリックレンズの特徴と費用

もともと乱視がある方には、トーリックレンズ(乱視矯正用眼内レンズ) が選択肢になります。通常の単焦点・多焦点レンズは乱視を矯正しないため、術後に乱視用眼鏡が必要になることがあります。

トーリックレンズには以下の特徴があります。

  • 乱視の度数・軸に合わせて設計された専用レンズ
  • 単焦点トーリックは保険適用のケースが多い(施設によって異なる)
  • 多焦点トーリック(遠くも近くも見えて乱視も矯正)は選定療養または保険外になることが多い

乱視が強い方はトーリックレンズによって術後の裸眼視力が大きく向上するケースもあり、担当医に相談してみる価値があります。

多焦点レンズは保険適用外?選定療養での追加費用

多焦点眼内レンズは、2020年4月以降「選定療養」として認められ、手術費用の一部は保険適用になりました。ただし、使用するレンズの種類によって取り扱いが異なります。

レンズ区分保険の扱い追加費用(目安・片眼)
単焦点レンズ全額保険適用なし
選定療養対象の多焦点レンズ手術料・検査は保険適用、レンズ差額のみ自費約5〜20万円
保険適用外の多焦点レンズ手術全体が自由診療約30〜50万円(両眼)

「選定療養」対象の多焦点レンズは厚生労働省が認定した製品に限られており、施設によって取り扱いレンズの種類が異なります。受診先で確認してみましょう。

術後の生活Q&A:日常で注意することと視力回復のコツ

点眼薬スケジュールと目薬の正しい使い方

術後は複数の点眼薬(抗菌薬・抗炎症薬・ステロイドなど)を一定期間使用します。一般的には術後1〜3か月かけて徐々に減らしていくスケジュールが組まれます。

点眼薬を使うときのポイントを確認しておきましょう。

  • 手を洗ってから点眼する
  • 点眼後は1〜2分目を閉じて薬を吸収させる
  • 複数の点眼薬がある場合は5分以上間隔をあける
  • 点眼容器の先端が目や手に触れないようにする
  • 処方されたスケジュールを守り、自己判断で中断しない

点眼薬のスケジュール管理は術後の回復・合併症予防にとても重要です。忘れないようにスマホのアラームなどを活用するのもおすすめです。

仕事・運転・運動はいつから?術後の注意ポイント

術後の日常生活への復帰については、担当医の指示に従うことが最優先ですが、一般的な目安は以下のとおりです。

活動再開の目安
軽いデスクワーク・読書術後2〜3日〜
車の運転術後1〜2週間(視力・医師の確認後)
入浴(湯船)術後1週間程度〜(顔をつけるのはNG期間あり)
水泳・コンタクトスポーツ術後1か月〜
重い荷物・激しい運動術後1〜4週間程度〜(医師に確認)

洗顔・シャンプーは目に水が入らないよう注意が必要な期間があります。また、術後は目をこすらないことが非常に大切です。

合併症を疑う症状が出たら病院へ!早期対応のチェックリスト

術後に以下の症状が出た場合は、速やかに受診しましょう。

  • 強い目の痛み・充血
  • 急激な視力低下・視野の欠け
  • 光が強くちらちら見える(飛蚊症の急激な増加)
  • 目やにが大量に出る・分泌物が増える
  • ものが二重に見える・ゆがんで見える

特に術後数日以内に強い痛みや急激な視力低下が出た場合は、眼内炎(感染症)の可能性があります。これは早期対応が予後を大きく左右するため、「様子を見よう」とせず、その日のうちに手術を受けた施設へ連絡・受診することを強くおすすめします。

まとめ

白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる病気ですが、適切なタイミングで治療を受けることで、視力を取り戻し生活の質を大きく改善できる可能性があります。

手術費用については、単焦点レンズを使用する場合は健康保険が適用され、自己負担は片眼あたり数万円程度が目安です。多焦点レンズを選ぶ場合は選定療養の仕組みを活用でき、レンズ差額分のみを自費で支払う形になります。高額療養費制度や医療費控除も上手に活用すれば、実質的な負担をさらに抑えることができます。

「手術はこわい」と感じる方も多いかと思いますが、現在の白内障手術は短時間・日帰りで行えるほど技術が進歩しており、安全性も高い治療法です。ただし、点眼薬や眼鏡で対応できる段階なのか、手術を検討すべき段階なのかは、眼科での精密検査を受けてから判断するのが一番です。

「最近なんか見えにくいな」と感じたら、まずは眼科に相談することを第一歩にしてみてください。

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